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【京都】京都在住の鳥獣画家・佐藤潤さん インタビュー

カルチャー, 京都

鳥獣画家として国内外で活躍する京都在住の画家、佐藤潤さん。
2020年に画業25周年を迎えるのを記念して、しまだいギャラリーにて記念絵画展「寿ぎの動物たち」を開催。
節目の年を迎え、あらたな花鳥画の世界を創り出し続ける佐藤さんに、お話をうかがいました。

 

絵を描くようになったきっかけは。

佐藤潤さん(以下、佐藤):
僕は大阪で生まれたんですが、当時は大気汚染が大変な頃で、僕も喘息がひどくて外に出ると咳が出るので、家で絵を描いてることが多い子供だったんです。
自然がまったくない所だったので憧れで動物を描くようになりまして、ずっと図鑑を写して描いてました。それをずっとやめずに続けてきて、大人になったという感じですね。

最初から動物を描いてたんですね。

佐藤:
図鑑をひたすらなぞって描いていたので、いまだに形が頭に入っています。
動物・恐竜・怪獣の区別なく写して描いてたので、そういう絵もたくさん残ってますね。

その経験が今にいかされてるわけですね。

佐藤:
そうですね。
作家さんでもいろんなタイプの人がいて、実物を見ないと描けないという方も多いんですけど、僕は基本的になにもなくても描けます。
やはり図鑑をなぞっていたのが染みついてるんだと思います。

高校・大学は美術系に行かれたんですか。

佐藤:
美術系の高校に進んだんですけど、
そのきっかけになったのが、中学3年のときの担任で、新任の美術の先生だったんですね。金八先生じゃないけどすごく暑苦しい先生で(笑)、その先生が「普通校に進んでいいのか」「おまえはそれでいいのか」「それで後悔しないのか」みたいな(笑)。
それで、当時は奈良に住んでたんですけど、県内に1つだけ美術高校がありまして、そこに行くことになりました。

その先生との出会いがなければその後の進路は変わっていたかもしれないですね。

佐藤:
そうですね。その高校が奈良の美術大学の付属みたいな感じで、大学の校舎の一部を使って授業を受けてたんですけど、奈良の橿原というちょっとミステリアスな地域にありまして、先生たちもそういう所に好んで住むようなヒッピーみたいな変わった方がたくさんいました。インディアンのところに染色の勉強に行って、酋長の娘と結婚させられそうになって逃げ帰ってきた染色家の先生とか(笑)、そういう方々に授業を見てもらってました。
高校ですけど専攻科がありまして、僕はデザインを専攻したんですね。大学は京都の精華大学に入ったんですけど、それもデザイン専攻で入ったんです。
デザインだと印刷も勉強できるし、写真もできるし、当時コンピューターはまだ出始めでしたけどCGもできるし、一番幅広くなんでもできるかなと思ってデザインを専攻しました。
結局デザイナーにはならずに絵の道に進みましたが、
いまだにデザインをやっていたというのが根底にあると思います。
僕は「好き勝手になんでも描いていい」というのをよしと思ってないんですね。この作品を見る人がいて、飾る人がいるというような、人の顔が念頭に必ずあって、自分のためだけに描くのではないと、常に意識して絵を描いています。
その辺がデザイナーぽいというか、よく仕事のしかたが江戸時代みたいだと言われます。クライアントの存在が頭の中に設定としてあったり、実際にクライアントがいる仕事も多いですし、そういうのがまったく苦にならないんですね。お題があってその上で制作するというのが得意なので、そういうスタイルが今でいえばデザイナー気質なのかなと思います。

絵のスキルはどうやって学んだんですか。

佐藤:
デザイン科といっても絵画の基礎は全部勉強するんですが、日本画や陶芸を専攻してる方みたいに専門ではやってないんですよ。ですので基本的には独学です。
洋画材なども多用しますし、自分では日本画家と名乗ったことはないんですよ。
絵のスタイルとしては、いろんなものが入っていて、自分の中で消化している感じですね。
小さい頃から一貫して動物がモチーフとなっているものを描いてるんですけど、環境破壊や動物の保護といった問題がどうしても避けられないテーマとしてあります。でもそればかりを描くと説教くさくなってしまうので、描くものは明るい仕上がりになるように、悲壮感が出ないようにというのは気をつけてます。
ただ紙を選ぶときに、普通の紙はやはり東南アジアなどの森林を伐採してパルプを植えて育てた紙になりますので、それはよくないだろうと思いました。
そこで国産で、再生力が強くて、リサイクルできるような紙がないかなと探したら、竹で作った「竹紙」という紙がありまして、それを手すきで作っていらっしゃる方を何人かご紹介していただいて、今は竹の紙を使うようになりました。

竹紙というのは描きやすいんですか。

佐藤:
めちゃくちゃ描きにくいですよ(笑)。
日本画はよく虫に食われまして、紙の繊維を食べられたり、絵の具を食べられたりするんですけど、竹は食う虫が極めて少ないんです。それに竹は竹炭といって防腐剤になるぐらい抗菌作用が強いので、カビないんですね。虫が食わないし、カビないし、非常に強いんですけど、水に弱いというのがありまして、濡れるとすぐに破れちゃうんですよ。ですので、普通に竹紙を渡してなにか描いてみてって言われても、うまく描けない。分厚いティッシュに絵を描くみたいな感じで、だからどうやったらこれに絵の具が思うようにのるんだろうと、滲みどめの加工などで最初は随分苦労しました。
京都に日本で唯一、竹ばかり扱ってる専門店がありまして、そちらの方と古くから知り合いで、その方を通じて最初のうちは随分と試させていただきました。今はそこから紙を仕入れさせていただいてます。
滲みどめもオリジナルの技法でやっているので、日本画のドーサ引きとかはしてないですね。

 

大学を出てすぐにプロになられたんですか?

佐藤:
大学の頃にデザインを勉強していたので、デザイナーになるか画家になるかというので悩んだんですけど、そのときに名刺なんかを作って、デザイナーということで仕事を受けたんですよ。
今から思ってもそこそこ大きいお仕事を受けさせてもらって、自分にはノウハウがないのでデザイン会社でアルバイトしてる同級生を雇って、大学で事務所をやりました。僕はあんまりなにもできないんでディレクターみたいな(笑)。
それをやって、これは一生はできないなって思ったんですよ(笑)。
そのときに学生としてはまとまったお金がいただけたんで、それで海外に行ったんですね。
僕らの頃は「海外に行かなあかん」みたいな、「外見てこなあかん」みたいな雰囲気がありまして、例にもれず僕も海外に行こうと思ったんですけど、湾岸戦争が起きて飛行機が飛ばなくなった(笑)。
それから半年後ぐらいに今度はソ連が崩壊して、ロシアに行けるとなって、大学の連中とロシアに行きました。
チェコもチェコスロバキアだった頃で、東ヨーロッパに興味があったんでずっといて、ウロウロしてました。そこでいろんな人と出会って、よくしてもらって、なんとなくやっていけるような気がしたんですよ。
東ヨーロッパはものすごくのんびりしてて、そういうのを見て、なんだかこういう時間軸で自分一人ぐらい日本でやっていけるんちゃうかなと思ったんですね。今にして思えば甘かったですけどね(笑)。

甘かったというのは。

佐藤:
やっぱり苦労しましたね。
お金もそうですし、駆け出しの頃ってやっぱり海外に何回も行かなあかんと思ってたので、日本に帰ってきたら京都でアルバイトして、絵の展覧会して、ちょっとお金が貯まったら海外に行くというのを繰り返してました。2~3年に1回はどーんと海外に行って、なにするというわけでもないですけど向こうにただいて絵を描いて、というのを繰り返して。
その頃に東ヨーロッパばかり行ってたんですけど、向こうの人たちは日本や東洋の文化にすごく興味があって、めちゃくちゃ聞いてくるんですけど、こっちは全然知らないんですよ(笑)なんにも答えられないし、それが日本の文化に興味を持つひとつのきっかけになりましたね。
自分が出入りしてるギャラリーのオーナーさんが、日本の古いアンティークなものや風習に詳しい方だったというのもあって、絵のスタイルも徐々に変わっていきました。
自分が好きで描いてきた動物が、日本の古い風習なんかに入ってるんですね。動物が意味を持ってそこにいるというのがすごく面白いなと。
昔の掛け軸なんかもよく見るんですけど、花鳥画といって鳥とか花とかいろいろ描いてありますけど、あれも組み合わせに意味があります。この花とこの動物はこんないわれがあって描かれているから、こういう人が来たときにはかけないといけないとか、ちゃんと決まりがあってそれがすごく面白いなというのでいろいろ調べたんですけど、昔から日本で描かれてるような動物のモチーフなんかには、だいたい意味がある。それもいい意味があるんですね。
それを“吉祥”といって、僕は“動物吉祥”といってるんですけど、その動物の数や仕草、どの季節にどういう体でいるのか、動物と動物の組み合わせ、花と動物の組み合わせと、すべてに意味があるというのを自分の絵の要素の中に入れるようになっていきました。

絵のアイデアはどうされてますか。

佐藤:
普段から絵のことばかり考えてますね。
僕は年間にたくさんの作品を作りますので、まったく新しいものばかりは作れないんですね。
これは海外に行ったときに思ったことですが、海外に行くと毎日スケッチするんですけど、延々と電車に乗らないといけないとか、どうしても描けない日ってあるんですよ。そうして次の日になると、一瞬描けないんです。一週間描き続けてたら勝手に手が動いて絵になるんですけど、1日休んだだけでそこに躊躇するんですね。一筆目を迷うというのが制作への恐怖につながっていくので、だからなるべく休まずに毎日描こうというので、僕はわりと同じテーマの作品を何回も描くんです。同じテーマで少し構図を変えたり、サイズや比率を変えたりして何回も描いてます。
それはアイデアを考えている間に休みたくないというのがありますし、描いているうちに新たなアイデアが生まれてくるものもあります。

アイデアが出なくて描けなくなるというのはないですか。

佐藤:
ないようにしてます。「スランプはないんですか」とよく聞かれるんですけど、それはないですね。
同じ絵を描くというのもスランプをなくす一つの方法といいますか、たくさんの作品を仕上げていこうと思うと、スピード的にスランプなんて言ってる暇がないんですね。
展覧会があるときは、本当にギリギリまで描いてるんですよ。
よく画家の仕事ってどんな感じですかってよく聞かれるんですけど、たぶん一番近いのは漫画家さんだと思います。編集さんが来て「先生原稿まだですか」みたいな、僕の場合はあんな感じに近いですね。
その編集さんが、うちの場合は額縁屋さんなんですね。額縁は1週間から2週間かかるので、額縁の注文は絵ができる前からするんですけど、先にタイトルを聞かれるんですよ。先にタイトルとサイズが決まってて、そこに向けて描いていく。
だからもう漫画家やデザイナーみたいな感じで、ギリギリまでやって締め切りが絶えずある、そんな慌ただしい日常を過ごしています。

 

今回の25周年の展覧会はどういった内容になりますか。

佐藤:
集大成的な感じですね。
自分が今まですごく得意としてきた動物吉祥、縁起のいい動物や日本の歳時記なども長く勉強してますので、それを絡めたシリーズや、その辺りを集大成的に見ていただけるような内容になります。
もちろん新作もたくさんあるんですけど、今まで何度か発表したことがあるものをもう1回書き起こしていて、今までで1番ベストの状態で描けていると思います。それまでひたすらカンヅメになりますけど(笑)。
自分は展覧会を北海道から沖縄までやらしていただいてて全国にお客さんがいて、今回のために京都に来くれる方もいらっしゃるので、京都らしい会場ということで「しまだいギャラリー」さんでやらせていただきます。きっと来られた方は喜んでくれるんじゃないかなと思います。
その後は、新宿からスタートして百貨店の展示の全国ツアーが始まります。
やり始めた最初の頃は不安でしたけど、どの会場も長くやらせていただいていて、待ってくれている人もいるというのは心強いですね。

貝合わせを始めたきっかけは。

佐藤:
もともと東京のお客さんから「大きなハマグリの貝殻を手に入れたから、絵を描いてほしい」というご依頼があって、そこからスタートしたんですね。
絵を描くためにはその貝を綺麗に洗わないといけないので、うちの妻がいろいろ試してやって、僕はどうやったら貝に絵の具をのせることができるのかに挑戦して、最初の貝殻を納めさせていただいたんですけど、その過程で貝のことを非常に好きになってしまって。
もともと2人とも貝殻が好きで、集めたりはしてたんです。
今ではもうライフワークのようになってますね。

今後の予定・目標は。

佐藤:
25周年記念ツアーが始まる感じですね。
おととしぐらいから海外でもアートフェアのような大規模な展示会に参加させていただけるようになってきたんです。今まではずっと国内中心だったんですけど、その比率を少し変えて、しっかりとした基盤で海外で活動できるようになればいいなと思います。

 

今回の絵画展では、動物にまつわる吉祥を描いた作品を中心に、約30点に及ぶ花鳥画を展示。
動物たちが繰り広げるかわいらしい動物吉祥の世界を存分に味わえます。
貝合わせ展「招福 はまぐり展 〜めでた尽くし〜」も同時開催で、2020年2月11日(火・祝)まで。

神馬と馬の郷土玩具を描いた作品「馬尽し」

 

恵比寿様と大黒天を鯛と白鼠に見立てた作品「恵比寿講」

 

佐藤潤 画業25周年記念絵画展

日程 2月8日(土)〜2月11日(火・祝)
時間 11:00〜18:00(最終日 17:00閉場)
会場 しまだいギャラリー 東館
〒604-0844 京都市中京区仲保利町191
075-221-5007
http://shimadai-gallery.com/
佐藤潤
1995年に京都にて初の個展を開催。2000年より全国の百貨店の美術画廊で個展を開催。
鳥獣画家として国内外で活動し、近年は金屏具や銀屏風に描いた作品や、ハマグリの貝殻に描いた「貝合わせ」を手がけるなど、独創的な作品を創り出している。
http://junsatooffice.oops.jp/
http://tomohuji.velvet.jp/
撮影:稲場啓太(いなフォト/https://inaphoto.shiga.jp/