イラン戦争ってなんなん?

2026年2月28日、イランの最高指導者アリー・ハメネイ師がアメリカとイスラエルの攻撃によって殺害されました。
イラン最高指導者アリー・ハメネイ師とは
イランでは大統領が行政府のトップを務めていますが、その上に「最高指導者」という独特の地位が存在します。
アリー・ハメネイ師は、1979年のイラン・イスラム革命後の1981年から1989年まで大統領を務め、その後、初代最高指導者ルーホッラー・ホメイニ師の死去を受け、1989年に第2代最高指導者に就任しました。
最高指導者はイランの政治的、宗教的な最高権威であり、軍の最高司令官でもあります。
外交・安全保障政策に大きな影響力を持つほか、司法府のトップや革命防衛隊などの主要ポストにも強い影響力を持っており、事実上、イランで最も大きな権力を持つ人物です。
なぜアメリカとイスラエルはイランを攻撃したのか
アメリカとイスラエルが攻撃の最大の理由として挙げたのが、イランの核開発と弾道ミサイル、そして中東各地の武装組織への支援です。
アメリカのトランプ政権は、イランが核兵器を保有することは容認できず、イランの核能力やミサイル能力がアメリカと同盟国に対する脅威になっていると主張しました。
イスラエルのネタニヤフ首相も長年にわたり、イランの核開発をイスラエルの存亡に関わる脅威と位置づけています。
ネタニヤフ首相によるイラン核開発への警告は1990年代初頭から繰り返されており、2015年に成立したイラン核合意に対しても強く反対していました。
しかし、イランの核問題をめぐっては、軍事攻撃とは別に外交による解決も進められていました。
2015年に成立したイラン核合意とは
2015年7月、イランとアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国などの間で、いわゆるイラン核合意が成立しました。
この合意では、イランがウラン濃縮度や濃縮ウランの貯蔵量、稼働させる遠心分離機の数などを大幅に制限する代わりに、欧米諸国などがイランに対する経済制裁を解除・緩和することになっていました。
また、国際原子力機関IAEAによる査察を受け入れることで、イランの核開発が軍事目的に転用されていないかを国際社会が監視する仕組みも整えられました。
ところが2018年、アメリカのトランプ政権はこの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再び強化しました。
これに対してイランも2019年以降、核合意で定められていたウラン濃縮度や貯蔵量などの制限を段階的に超えるようになります。
その結果、イランの核開発をめぐる緊張は再び高まっていきました。
2025年6月 イスラエルとアメリカがイランを攻撃
2025年6月13日、イスラエルはイランに対する大規模な攻撃を開始しました。
核関連施設や軍事施設、軍幹部、核科学者などが標的となり、イランもイスラエルにミサイルやドローンによる反撃を行いました。
さらに6月21日にはアメリカも軍事介入し、イランの主要な核関連施設3か所を攻撃しました。
トランプ大統領は攻撃後、イランの主要核施設を「完全に破壊した」と主張しています。
2026年に入ると、アメリカとイランはオマーンの仲介によって再び間接交渉を始めます。
2月26日にはスイスのジュネーブで協議が行われました。
2月27日、仲介役を務めていたオマーンのバドル・アル・ブサイディ外相は、交渉で大きな進展があったと説明しました。
さらにIAEAによる全面的な検証を受け入れることも協議されていました。
しかし、その翌日の2月28日、アメリカとイスラエルはイランへの大規模攻撃に踏み切ったのです。
2026年2月28日、再びイランへの大規模攻撃
2026年2月28日に始まった攻撃は、2025年6月の攻撃を上回る大規模なものとなりました。
アメリカはイスラエルとともにイランの軍事施設、弾道ミサイル関連施設、革命防衛隊や政府指導部などを攻撃しました。
その中で最高指導者アリー・ハメネイ師が死亡し、軍や安全保障部門の要人や、ハメネイ師の家族などが死亡しました。
攻撃後、トランプ大統領は「歴史上最も邪悪な人物の一人であるハメネイが死亡した」とSNSに投稿しました。
トランプ政権はイランを「世界最大のテロ支援国家」と位置づけ、核能力だけでなく弾道ミサイルや武装組織への支援もアメリカや同盟国に対する脅威だと主張しました。
軍事作戦の目的についても、イランが核兵器を保有することを阻止し、ミサイル能力や海軍力、親イラン武装組織への支援能力を破壊することなどを掲げています。
国際法上の問題
この攻撃の合法性をめぐっては強い批判が起きました。
国連憲章では、原則として他国に対する武力行使は禁止されています。
例外として、国連安全保障理事会の承認がある場合や、自国が武力攻撃を受けた場合の自衛権の行使などが認められています。
アメリカ側はイランによる「差し迫った脅威」を排除するための行動だったとして正当性を主張しましたが、イランによるアメリカへの差し迫った武力攻撃が存在したことが十分に示されていたのかについては疑問が呈されています。
国連のグテーレス事務総長も、米国とイスラエルによる攻撃は国際法と国連憲章に違反すると批判しました。
国際法上の合法性には重大な疑義があり、多くの国際法学者や各国政府から違法な武力行使だとの批判が出ています。
イランが大規模な反撃
イランも攻撃を受けるとすぐに反撃を開始しました。
多数の弾道ミサイルやドローンをイスラエルに向けて発射したほか、中東各地に展開するアメリカ軍の基地や関連施設も標的となり、戦闘はイランとイスラエルだけにとどまらず、中東各地へ拡大していきます。
一方で、イランによる湾岸諸国への攻撃についても国際法上の問題が指摘されています。
攻撃を受けたイランがアメリカやイスラエルに対して必要かつ比例的な自衛措置を取ることと、第三国の領域や民間施設を攻撃することは別の問題だからです。
国連も米・イスラエルの攻撃だけでなく、イランによる周辺国への攻撃についても各国の主権と領土保全を侵害するものとして批判しています。
イランがホルムズ海峡を事実上封鎖
さらに世界経済に大きな影響を与えたのが、ホルムズ海峡の封鎖です。
ホルムズ海峡はペルシア湾とオマーン湾を結ぶ狭い海峡で、世界の石油やLNG輸送の約2割が通過する、世界でも最も重要な海上輸送ルートの一つです。
2月28日の攻撃後、イランはホルムズ海峡の船舶航行を大幅に制限しました。
商船やタンカーが攻撃を恐れて航行を停止したこともあり、海峡を通るタンカーの交通量は急減し、一時は事実上の封鎖状態となりました。
石油輸送が滞ったことで国際原油価格は急騰し、世界各国の金融市場にも大きな影響が広がります。
日本は原油輸入の9割以上を中東地域に依存しており、その多くがホルムズ海峡を通過します。
そのため、海峡の通航が困難になると、日本への原油輸送にも直接影響します。
実際に2026年3月以降は中東から日本への原油輸入が大幅に減少し、日本政府は石油備蓄の放出に踏み切りました。
戦争による供給不安は原油価格を押し上げ、ガソリンや電気料金、物流費など幅広い物価への上昇圧力となります。
また、戦争開始直後には金融市場も動揺し、株価が下落するなど、日本経済にも影響が及びました。
欧州ではアメリカとイスラエルへの批判も
アメリカの同盟国からも、今回の軍事行動を批判する声が出ています。
スペインのペドロ・サンチェス首相は、アメリカとイスラエルによる攻撃を違法だと批判しました。
さらにスペイン政府は、国内にあるロタ海軍基地やモロン空軍基地をイラン攻撃に利用することを認めず、イランでの軍事作戦に関係する米軍機の飛行計画を拒否しています。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相も3月11日、議会で、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事介入を「国際法の範囲外」で行われた一方的介入の流れの一つとして批判しました。
メローニ政権はイランの核武装にも反対していますが、同時にイタリアが米・イスラエルによる対イラン攻撃に参加する立場ではないことを明確にしています。
一方、日本政府はイランによる核兵器開発は認められないとの立場を繰り返し示し、イランによる湾岸諸国への攻撃やホルムズ海峡の航行を脅かす行為について強く非難しました。
日本政府も攻撃の応酬そのものに深刻な懸念を示し、アメリカ、イスラエル、イランの各国に対して事態の早期沈静化を求めています。
イラン戦争は世界経済を巻き込む問題へ
2026年2月28日に始まった戦争の影響は、単なるアメリカ・イスラエルとイランの軍事衝突にとどまりませんでした。
イランによる周辺国への反撃、ホルムズ海峡の事実上の封鎖、原油価格の上昇などを通じて、その影響は世界経済へと広がりました。
特に中東産原油への依存度が高い日本にとって、ホルムズ海峡の安定は経済や日常生活にも直結する問題です。
その後もホルムズ海峡をめぐる対立は続き、6月にいったん成立した米・イラン間の暫定的な和平合意も崩壊しました。
戦争は完全には終結しておらず、イランの核問題、ホルムズ海峡の航行、経済制裁などをめぐる対立が続いています。